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 ▼2003年7月23日付け 
  国あて「ホームレス基本方針(意見)」
(パブリック・コメント)

「ホームレス特別措置法」の規定にしたがい、厚生労働省・国土交通省は2003年7月31日「基本方針(ホームレスの自立の支援等に関する基本方針)」を制定しました。その制定に先立ち、基本方針の草案に対して国民一般からコメントが募集されました。(詳細は厚生労働省のページにあります。)
我々も、居宅の支援の充実、および追い出しや取締りの反対について特に意見を提出しました。


厚生労働省社会・援護局地域福祉課御中

        2003(平成15)年7月23日

             平塚パトロール
                   〒231-0026
                   横浜市中区寿町3-9-4-2F
                   寿日雇労働者組合 気付


ホームレス基本方針について(意見)


我々平塚パトロールは、野宿者に対する差別・偏見に抗議し彼らが人格的尊厳を回復できることを目指し、平塚市において、2001年4月から野宿者支援・訪問活動(パトロール)を自発的に行っている野宿者支援団体である。

本年7月3日に御庁より発表されたホームレス基本方針案(以下、本基本方針案という。)に対し、以下のとおり意見を提出する。


●第3−2(2)について
【意見】以下の項を挿入する。

イ 国および地方公共団体は、居宅生活を開始しようとするホームレスに対し、民間賃貸住宅を借り上げて貸与し、もしくは民間賃貸住宅物件をあっせんし、または入居希望のホームレスを賃貸人になろうとする者に紹介する施策を行う。

ウ 民間住宅を賃貸するに当たって保証人を確保できない者のために、公的に保証を付す施策を行う。

(イをエに繰り下げ)

【理由】
1、ホームレスが居宅生活の開始に当たって入居すべき住宅の物件を確保する作業は大きな障壁であり、野宿者支援活動においてしばしば突き当たる困難でもある。一般に、入居しようとするホームレスの需要に対して、賃貸住宅市場で供給される物件の数は不足している常況であり、これに対して単に情報提供程度の支援で有効に対処できるとは考えられない。行政の責任において物件を確保すべきである。

2、保証人の確保も大きな困難であり居宅生活への障壁となっている。民間の保証人事業はホームレスにとって必ずしも利用可能なものになっておらず、公的な支援が必要である。


●第3ー2(9)について
【意見】次のように修正すべきである。

(9)地域における生活環境の改善に関する事項について
 都市公園その他の公共の用に供する施設を管理する者は、当該施設をホームレスが起居の場所とすることによりその適正な利用が妨げられているときは、福祉事務所およびホームレス自立支援対策の担当部署等(以下福祉部局等という。)と連絡調整し、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ、当該施設の適正な利用を確保するために、以下の措置を講ずるものとする。
ア  当該施設を起居の場とするホームレスの存在を福祉部局等に通報する。

イ  ホームレスおよびその占有物が当該施設を占拠している場合に撤去指導または監督処分を行おうとするときは、アの通報を受けた福祉部局が当該ホームレスの処遇を決定した後に、法令に基づいて行うものとする。

ウ イの措置を行うに際しては、人権に関する国際約束の趣旨に十分配慮し、ホームレスの人権を最大限に尊重することを要する。


【理由】
1、法11条において「ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図りつつ」の文言が敢えて書かれている趣旨は以下のとおりである。すなわち、ホームレスがこれら施策を受けることも無しにただ寝場所・居場所を奪われるとすれば、ホームレスの人権保障および自立の助長に著しく反することとなるので、施設管理者がホームレスに対し措置を行う場合には、最低限、自立支援施策との連携を義務付けたものである。
しかるに、本基本方針案における本項ア、イには、自立支援施策との連携について全く触れられておらず、施設管理者にとってとるべき自立支援策を具体的に指示していないから、現実には自立支援施策なしに施設の適正化措置を講ずることが可能かのように解釈されかねない。
よって上のように修正する。

2、施設管理者の適正化措置は、ホームレスの財産的・精神的利益と衝突する可能性の高い行為である。ホームレスは自己の権利を防御するのに不利な社会的状況下に置かれた存在であり、管理者の権力の発動に対し、ホームレスの人権が最大限の尊重を要することはいくら強調してもしすぎることはない。とりわけ国際人権規約等の条約の趣旨を尊重すべきことは衆院厚労委員会の付帯決議でも触れられている点である。


●第3−2(10)について
【意見】次のように修正すべきである。

(10)地域における安全の確保等に関する事項について
 地域における安全の確保及びホームレスの被害防止を図るためには、ホームレスの人権に配慮し、ホームレスに対する自立支援施策を積極的に推進することによってホームレス問題を解決すると共に、地域住民に対してホームレス問題を理解しホームレスの自立支援に対する協力を得るような以下の施策を行うことが重要である。

ア 地域住民に対してホームレス問題を理解してもらうための啓発・広報活動、および地域住民と野宿者との交流・相互理解を図る施策を推進する。

イ 学校教育において、人権教育の一環として野宿者問題への理解を深める教育を行なうこと。

ウ 警察は、ホームレスから犯罪被害の届出を受け、またはホームレスに対する犯罪行為を認知したときには、一般市民に対する犯罪と同様にこれを誠実に受理・捜査することとし、ホームレスを差別的に取り扱わないこと。


【理由】

1、本項は、ホームレスが存在することそのものがあたかも地域社会における安全をおびやかしているかのような誤った印象を与えるものである。ホームレスが野宿生活をしていることそのものが警察による指導・取締り・パトロールの対象になるかのような表現は到底承服できない。

2、ホームレスの存在が「地域住民等の不安感」の原因になったとしても、そのような不安感は誤解・偏見に基づくものでしかないことは、日常的にホームレスに接している我々の最もよく知るところである。

3、そのような誤解・偏見に対し、警察のパトロール活動強化という形で対応することは、ますます住民の不安感をあおる結果にしかならない。

4、そのような誤解・偏見を解くためには、地域住民に対してホームレス問題を理解してもらうための啓発活動・広報活動をすべきである。あるいは、地域住民と野宿者との交流・相互理解の場を創出すべきである。本基本方針案には、地域の安全確保に関する地域住民の果たすべき役割についての項目が入っておらず、法7条の趣旨が生かされていない。

5、同時に、ホームレスが野宿場所に継続的にとどまらざるを得ないのはホームレスに対する自立支援策が不十分なためであり、これに対する対策は、自立支援策の積極的推進以外にない。

6、ホームレスは、犯罪の被害にあっても、権利主張がしにくい立場にある。仮に被害を警察に届けたとしても「野宿者だからまともに取り合ってもらえなかった」という訴えを我々は野宿者からしばしば耳にする。ホームレスに対する犯罪行為は、一般市民に対するそれと同様に許されない行為である。仮に警察がホームレスから被害の届を受けた場合には、関係処罰法規に従い厳正に対処されるべきである。そのような捜査機関の適正な権限発動を確保するために、基本方針に当該項目を特に盛り込むべきである。

7、他方において、特段犯罪被害にも遭わず、被害を届け出てもいないホームレスにとっては、日常的に警察のパトロールを受けることを望んでいるものではない。野宿者支援の現場において、野宿者から警察の日常的パトロールを望む声は聞かれない。

8、ホームレスが潜在的犯罪者であるかのように扱うことは、事実に反し、またホームレスの人権保障に反し、許されない。あまたの野宿者の中には犯罪に関与する者もいることであろうが、それは一般市民と同様である。犯罪を犯した場合には何人も司法機関の適正な捜査の対象となることは、法律上当然の理であり、あえて基本方針に記載する必然性はない。

9、警察による指導・取締・パトロール活動は、野宿者に対し野宿場所を退去するよう強要する指導・取締りに容易に転化しうる。そのような指導はホームレスの人権保障に反し、法の目的たる自立支援に逆行する。警察の取締りによってホームレス問題が解決することはない。

10、本基本方針案のウについては、警察官職務執行法等の法令にすでに規定されている内容以上のものではないから基本方針に規定する必要性はない。また、7、ないし9、の理由から、これを基本方針で規定する相当性もないので削除する。

11、野宿者に対する暴力・襲撃は、野宿者に対する社会の差別意識、野宿者を人間以下に扱う意識が表れたものである。ホームレスの人権を守るべき意識を社会全体が共有することによって、野宿者への暴力行為を減らすことができる。

12、少年らが野宿者を襲う事件は、大人社会の野宿者差別意識が子供にも投影された結果である。よって、教育の場で野宿者の人権を守る意識を高めることは有効な対策である。


 
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