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| ▼2005年8月10日付け 平塚市長あて 「(仮称)平塚市さわやかで清潔なまちづくり条例」骨子案に対する意見 市が、「(仮称)平塚市さわやかで清潔なまちづくり条例」骨子案(PDF 311KB)を発表し、これについて意見募集(パブリックコメント)を行った機会に、平塚パトロールから意見を提出しました。なお、このパブリックコメントに対する「市の考え方」はこちら(PDF 19KB)。 |
「(仮称)平塚市さわやかで清潔なまちづくり条例」骨子案に対する意見
2005年8月10日
平塚市長 大藏律子殿
環境部資源循環課資源循環担当 御中
平 塚 パ ト ロ ー ル
<連絡先>〒231-0026
横浜市中区寿町3−12−2 寿生活館2F
寿日雇労働者組合 気付 (担当:由良)
Eメール:hiratsukapatrol@infoseek.jp
URL:http://hiratsuka-patrol.hp.infoseek.co.jp/
我々平塚パトロールは、平塚市において、野宿者支援・訪問活動(パトロール)を行っている市民有志による野宿者支援団体である。
我々の活動および主張一般については、我々は貴市に対し、2003年7月28日付にて「野宿者政策に関する提言」を提出済みであり(ウェブサイト:http://hiratsuka-patrol.hp.infoseek.co.jp/proposal.htmlにて公開している)、かつ、福祉部局のみならず環境部環境業務課担当者とも話し合いの場を設けてきたところであって、すでに貴市の理解を得られているものと考える。
標記の条例骨子案(以下、本件骨子案という。)に対し、下記のとおり意見を提出する。
記
(意見その1)
本件骨子案は、野宿者との関係において、
@「市民が、美化環境の維持向上に反する行為に対し注意・助言する権利」を定めた部分、および
A市が認めた以外の者が、ごみステーションから資源再生物を運搬・搬出する行為につき勧告・命令を行い、違反者に罰則を科すとする部分
が、野宿者による廃品回収業などの都市雑業の維持継続を困難にし、就労の途を奪うものであって、野宿者の生活基盤を破壊し、野宿者の生命・身体・財産および人格的尊厳を脅かすから、上記各部分を削除すべきである。
1、 「美化環境の維持向上に反する行為に対し注意・助言する」ことを「市民」に促し、また「ごみステーションから資源再生物を運搬・搬出する行為」に対して「罰則」を設ける本条例によって、野宿者の生活がただちに行き詰まってしまうことが容易に予想される。
2、(1) 現在平塚市内には150名にも迫る数の野宿者が日々生活しているが(2003年1〜2月の国による全国ホームレス実態調査の際の数字によれば112名となっている)、そのうち相当多く(6割程度)の野宿者は生活を継続するにあたって、資源ごみや廃品を回収し、リサイクル業者へ売り渡すことでわずかに命をつないで生活しているのが現実である。
その実態は、炎天下や冷雨の中を、時には1日十数時間も資源を探して歩き回り、ようやく数百円から千円程度の少額の現金を得て、これを食品や日用品に換えて生活を保つというものであり、それが来る日も来る日も続くのである。たいへん苛酷で厳しいものである。
しかし、本人に他に選びうる途がないことも相まって、多くの野宿者がそのような厳しい選択をしているのが実情である。
(2) 野宿者はこの資源・廃品回収の作業を行うとき、地域住民の視線を強く意識し、敏感になっているのが通常である。地域住民とできるだけトラブルにならないよう留意し、仮にも苦情を受けるようなことがあれば、その場所での回収は以後遠慮する、と多くの野宿者が証言している。野宿者とはそれほどに地域に対し気後れして遠慮しながら生きている存在である。
(3) 本件骨子案の示す条例が制定されれば、野宿者は、「市民」から「注意」されることにおびえ、実際に「注意」を受ければ、多くの場合、過剰に反応してしまうだろう。「罰則」による威嚇と相まって萎縮効果は十分すぎるほどであり、野宿者は回収活動から完全に閉め出されてしまう。わずかな収入を断たれる野宿者にとって、生命の危機にもつながりかねない。
(4) さらに本条例は、回収活動に留まらず、野宿生活の全般に悪影響を与えることが心配されるのである。心配される2次的な被害とは、以下の通りである。
(ア) 野宿生活の全般にわたって、過剰な「自主規制」が働くようになり、野宿者の人間的な生活が損なわれる。
野宿者にとって今日まで営々と行ってきた仕事が、突然の条例化で禁止される。何の代替措置もなく、何の異議も認められない。このように日々の営みが突如として社会により否定されることが正当化されるなら、野宿者にとって今日の営みが明日も可能であるという保証は何もないことになり、強い萎縮効果をもたらす。その結果、「自分の姿が人目についてはならないのではないか」「この場所で生活すること自体が許されないのではないか」と常におびえて暮らすことになり、人間性も失われるのである。
およそ職業とは生活の糧を得る手段であると同時に社会参加と自己実現の過程でもある。都市雑業に生きる野宿者にとってはそれが彼の職業であり、社会の一員として、自分らしい生き方を実現する過程なのである。(都市雑業も自立の形態として法的にも認められていることは後述する。)
それが、条例によって彼の職業を違法な犯罪とみなし、破廉恥な行為と規定し、市民から「注意」を受けるようなことと位置付けることになれば、その野宿者にとっては、自分の存在自体が犯罪で破廉恥であり、社会から排除されるべき存在なのだと認識することになるだろう。行政や市民社会からそのような否定的なサインを受け取った人が、どんなみじめな気持ちがするかを考えてほしい。
(ウ) 「市民」に対し、野宿者は「泥棒」であり監視の対象であるという間違ったメッセージを送り、すでにある野宿者と「市民」との関係を損なってしまう。
野宿者に対し、敵対的感情を抱く市民ばかりではない。市民の中には、その身近に生活する野宿者(廃品回収等の都市雑業に携わる野宿者を含む。)との間に、理解・協力関係、自発的な支援関係、人間的な交流関係を築いておられる人たちもいる。まことに尊いことと言うべきである。
本件骨子案は、野宿者自体に潜在的犯罪者集団としてのレッテルを貼りつけ、市民と野宿者とが人間的に関わろうとすること自体を白眼視する風潮を作出し、ひいては野宿者の自立を阻害するおそれがある。
(5) 要するに、本件骨子案による条例化で、野宿者の自立は回復しがたいほどに損なわれることが危惧されるのである。
3、(1) 貴市は、上記2、(1)(2)のような野宿者の生活・就労実態について把握しておられるのか。少なくとも、我々の知る限り、上記のような野宿者の生活・就労実態について、全市的な調査を行ったことはない。
そして、本件骨子案を発表するに当たっても、こうした野宿者の実態、およびそれに与えうる影響について一向に顧慮した形跡がないし、顧慮しようともしていないのである。
まず実態を調査し、そしてそれに即した施策を実行していくというのが行政の常道であるが、本件骨子案では、少なくとも野宿者に関しては、これに全く反することが行われているといわざるを得ない。
(2) いったい、貴市は、廃品回収など都市雑業で生計を立てていこうと考えている野宿者に対して、どのような支援の方針を有しているというのか。全くの無為無策であるのが現状ではないか。その一方で、明らかに野宿者を困窮に陥れる施策だけが着実に推進されるのはどういうことか。まさに「やらずぼったくり」と言わずして何であろう。
(3) 今般、本件骨子案の趣旨の条例が制定されれば、野宿者の廃品回収業による自立が一般的に違法とされる可能性が高い。野宿者が生命・身体の危機にさらされることはもちろん、自立の形態を否定されることであるから、彼らの人格権・生存権に関わることであり、まことに重大な、ゆゆしき問題である。
(4) 以上のことは、我々が貴市に対してこれまでも再三申し入れてきたとおりであり、貴市も十分認識しているはずの事項である。それにもかかわらず、今般、本件骨子案のごとき条例を漫然と制定しようとしていることは、はなはだ遺憾といわざるを得ない。
(意見その2)
本件骨子案は、野宿者との関係において、
@「市民が、美化環境の維持向上に反する行為に対し注意・助言する権利」を定めた部分、および
A市が認めた以外の者が、ごみステーションから資源再生物を運搬・搬出する行為につき勧告・命令を行い、違反者に罰則を科すとする部分
が、法律の趣旨に反して、野宿者の廃品回収等の都市雑業による就労自立を阻害するもので、そのような条例は違法であり無効であるから、上記各部分を削除すべきである。
(意見その2の理由)
1、 野宿者の人権に配慮し、野宿者の自立を支援すべきことは、憲法および法律の要請であるから、下位規範である条例によってこれを阻害歪曲してはならないのである。
2、 法律上の根拠として、「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(平成14年法律105号)の規定がある。
同法は、「自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在」し、その者に対し自立を支援すべきこと(1条)、そのため就業機会の確保その他の施策が総合的に推進されるべきこと(3条)、地方公共団体がその責務を負うこと(6条)、国民も地域社会において自立支援に協力すべきこと(7条)等を定めている。
3、 そして、同法に基いて国が策定した「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」(平成15年厚生労働省・国土交通省告示1号)において、常用雇用による自立が直ちには困難なホームレスに対し、都市雑業的な職種の開拓や情報収集・情報提供を行うべきことが明記されている(第3−2(1)カ)。ここでいう都市雑業の中には、廃品回収なども含まれる。
4、 要するに、廃品回収も就労による野宿者の自立の一形態であり、自治体にはその自立を支援する責務があり、地域住民もこれに協力せよというのが、法の趣旨である。
とすれば、市の資源ごみ政策の中で、上記のような野宿者の自立のニーズを考慮することも、地方自治体としての平塚市に課せられた法律上の責務といわなければならない。この法律の趣旨に反する条例は無効である。
(意見その3)
本件骨子案は、その目的として、美化環境を掲げているところ、ごみステーションからの資源再生物の搬出・運搬する行為の禁止を定める部分は、廃棄物等の散乱防止など物理的清潔との関連がなく、上記美化環境の目的と無関係の規制であるので、削除すべきである。
(意見その3の理由)
1、 本件骨子案のいう条例の目的は、「市民、事業者、市が、美化環境の確保について共通認識を持ち、各々の責務の追行と、互いに連携し協働することによりさわやかで清潔な街づくりの推進を図ること」(本件骨子案2−1)である。すなわち「美化環境」こそが目的である。
ここでいう美化環境とは、廃棄物等が飛散・散乱しないことを中核とした物理的清潔の概念であると解される。なぜなら、本件骨子案は現行廃棄物条例の第6章を分離独立したものであるところ、同章の各規定(30条ないし33条)は、廃棄物や空き容器、犬猫のふんなど汚物の投棄・散乱・飛散を防止する目的のものと解されるからであり、本件骨子案の「美化環境」も同様の状態を指すと解釈するのが自然であるからである。そして、本件骨子案の3−2、3−3などの記述には、空き缶、たばこの吸殻、紙くず等の飛散・投棄、たんつばの吐き捨て、釣り針のポイ捨てなど、廃棄物の不法投棄防止を中心に、物理的に街を汚さないことに関しての問題意識が列挙されているのである。このことから、たとえば落書き行為の禁止も、物理的汚損の防止として理解できる。
2、 ところが、ごみステーションから資源再生物を搬出する行為は、それ自体は、廃棄物を散乱させるものではなく、街を物理的に汚損することは考えられないのであって、美化環境に反するものではない。
実際のところ、ごみステーションからの資源再生物搬出が街の物理的な清潔を害しているという趣旨の市民の苦情は存在しないし、少なくとも存在することが論証されていない。
3、 よって、ごみステーションからの資源再生物の搬出・運搬する行為の禁止は、条例の目的に無関係の規制であるから、不必要な自由の制限であって、削除すべきである。
4、 仮に、一般抽象的な規制の必要があったとしてもその必要性は漠然不明確であり、これに対し刑事罰をもって威嚇するのは規制手段として明らかに行き過ぎで、不相当であるから、少なくとも命令・罰則について削除すべきである。
(意見その4)
仮に、残念ながら上記の各意見が容れられがたいときは、
廃品回収により生活を維持している野宿者の生活保障と人権に配慮し、廃品回収により生活することが法律が認める自立形態であり地方自治体としての平塚市にはこの自立形態を支援する責務があることに鑑みて、
@本件骨子案中、ごみステーションから資源再生物を運搬・搬出することを市が認めた者の中に、野宿者(ホームレス)が含まれることを明記すべきであり、
A市民は、上記の市が認めた野宿者(ホームレス)による運搬・搬出に関して、みだりに苦情を申し述べ、または注意・助言してはならない旨を明記すべきである。
(意見その4の理由)
1、 貴市の条例上、野宿者(ホームレス)に対し特別の配慮を払ったとしても、それはなんら不当な優遇にはあたらないし、むしろ法の要請にかなったことである。そのことは、憲法および法律に根拠があるのであって、詳細は意見その2の理由としてるる述べたとおりである。すなわち、廃品回収業のような生計の立て方も野宿者の自立の形態として認め支援する義務が自治体にあるというのが、法律の趣旨である。
2、 廃品回収業など都市雑業に頼っている野宿者にとっては、生活と生命がかかっている。仮にこの廃品回収業の途を断たれると、即座に生活に困窮し、その日のわずかな食物も入手することができなくなって、すなわち生命・身体が深刻な危機にさらされる。安定した生活基盤がない野宿者にとっては、市の政策の変化が重大に作用することに留意しなければならない。
この点、トラックでゴミ集積場に乗りつけ組織的・大規模に回収していくような、いわゆる悪徳業者と、野宿者とは一緒には扱えないことは明白である。
3、 野宿者にとっては、市民による「注意」も重大な威嚇として作用することは、先に述べたとおりである。
4、 仮に、行政が野宿者の窮状を知りつつあえてこれを無視してその生活と生命の基盤を奪うような政策をとるなら、深刻な人権問題であるといわなければならない。
すでに述べたとおり、野宿者にとって廃品回収を禁止されることは、すなわち生命・身体への権利が損なわれることであり、生存権を脅かされることであり、また自ら選んだ自立の形態を否定されることで自己決定権・人格的自律権を侵害され、人格的尊厳を損なわれることである。
本件骨子案による条例は、野宿者の人権を根底から損ないかねない。
以上
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