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| ▼2003年2月28日付け 平塚市長あて「ホームレス特措法の解釈についての見解」 「ホ-ムレス特別措置法」の誤った運用により野宿者の利益が不当に侵される懸念があるので、法律の“正当な”解釈を平塚パトロールから示したもの。 |
ホームレス特措法の解釈についての見解
2003年2月28日
平塚市長 吉野 稜威雄 殿
神奈川全県夜回り・パトロール交流会
平塚パトロール
「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」(平成14年法律第105号。以下「特措法」ないし「同法」という。)が、昨年8月7日に公布・施行されました。
同法については、その立法段階から、野宿者排除の正当化につながるのではないかと危惧する声がありました。同法の目的は何よりも「ホームレスの自立の支援」(1条)とそれによる「ホームレス問題の解決」(同)であり、また同条は「ホームレスの人権に配慮し」と明確に規定しています。同法の解釈に当たっては、支援を受けるべき野宿者の基本的人権を侵害し、ないしホームレス問題解決に逆行するような解釈は許されないものです。
我々は、ホームレスの支援に携わる民間団体として、下記の通り同法の解釈についての見解を示します。
記
1.ホームレスの人権の保障
ホームレスも当然に、居住の自由(憲法22条)、財産権(同29条)、住居の不可侵(同35条)などの権利を有し、生存権(同25条)、勤労の権利(同27条)や個人の尊重・自己決定権・幸福追求権(同13条)、およびその具現化として自立する権利を有する。これら基本的人権の保障は憲法上の要請であるとともに、国際人権規約社会権規約11条、および同規約委員会の所見・意見、同自由権規約12条、同17条、ならびに世界人権宣言等の命じるところである。(平成14年7月17日衆議院厚生労働委員会決議「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の運用に関する件」第5号は、同法施行にあたり「人権に関する国際約束の趣旨に十分に配慮すること」とする。)また同法1条でも「ホームレスの人権に配慮し」との文言が明記され、同法自身が指針とするところである。
以上に鑑み、上記ホームレスの基本的人権の保障が同法の解釈原理とされなければならず、これに反する解釈は許されない。
2.ホームレスの定義と特措法の責務
特措法2条は、ホームレスを、公共施設を「故なく起居の場と」する者と定義し、端的に不法占拠者として扱うかのごとくである。しかし、同法は1条で「自立の意思がありながらホームレスとなることを余儀なくされた者が多数存在」するという見解を明確にしており、野宿者を怠け者だとみなすような自業自得論、自己責任論を否定している。むしろ同法は、そのようなホームレスに対しても「人権に配慮し」(1条)、「健康で文化的な生活を送れないでいる」(同条)彼らに最低生活(憲法25条)を保障することを責務とし、自立支援施策を行わない限り退去を求めることができない(11条)ことを定めたものと解釈すべきである。
3.「自立の努力」の訓示性
(1) 特措法4条は、ホームレスの「自立への努力」を定めている。しかし、当該義務は努力義務にすぎないことは文理上明らかで、訓示的規定と解するべきである。よって、同条の「自立の努力」を貴市が行なう施策の享受資格要件とし、または行政上の不利益な取扱の根拠にすることは許されない。
(2) 「自立」は幸福追求・自己決定の問題であり(憲法13条)、ホームレスが国・地方公共団体の行う自立支援施策を活用しないことをもって直ちに自立への努力が足りないと断定することは許されない。
4.住民苦情への対応と追い出しの禁止
従来から、ホームレスが居住する場所の周辺住民から、「目障りだ」「怖い」などの、多くは偏見に基づく苦情が行政に寄せられる事例に事欠かない。しかし、特措法は3条1項3号で「国民への啓発活動等によるホームレスの人権の擁護」を施策目標とし、かつ7条で国民に対し「ホームレス問題に関する問題について理解を深め」「自立の支援等に努める」協力義務を課している。よって、このような住民苦情があった場合には、行政は、当該住民に対して啓発活動を行い、ホームレス問題への理解と協力を当該住民に対して求めなければならない。まして、単にこのような住民苦情に応えるため当該ホームレスに対して退去を求めることは、ホームレスの人権保障に反し、その自立を阻害するから、違法であり到底許されない。
5.施設管理者による措置の要件
施設管理者が野宿者に対して何らかの措置を行う場合には、特措法11条の規定に従い以下の要件を満たす必要がある。
(ア)当該施設をホームレスが起居の場とすること。
(イ)施設の適正な利用が妨げられていること。
(ウ) (ア)(イ)に因果関係があること。
(エ)自立支援施策との連携が図られていること。
(オ)法令の規定に基づく措置であること。
(カ)当該施設の適正利用確保に必要最低限な措置であること。
6.証明責任
前条の(ア)ないし(カ)の各要件を満たすことの証明責任は、同法11条の定めに従って措置を行う者である施設管理者側に存する。
7.自立支援施策の不在
(1) 貴市では、いわゆる自立支援施策のうち現実に利用可能なものはなきに等しい現状である。例えば、貴市および近隣市では、緊急一時宿泊施設(シェルター)や自立支援センターなどの施設で、公設のものは存在しない。職業訓練や就労機会確保につながる施策も皆無に等しい。食品や日用品の緊急支給を行う制度さえも未整備である。このように、自立支援施策が何もない貴市においては、同法11条の「自立支援施策との連携」の要件を満たすことはありえず、当面、同条の措置はとりえない。
(2) たとえ何らかの施策が存在したとしても、ホームレスがその施策の享受要件を満たさない場合や、施策が本人のニーズに全くそぐわないものである場合には、当該ホームレスにとって利用しうる自立支援施策は存在しないことになるから、同法11条の「自立支援施策との連携」の要件を満たすことはありえず、当該ホームレスに対する限り同法11条の措置を行うことは違法である。
8.実施計画策定・施策実施の義務
同法6条は、地方公共団体に、一般的な施策の策定・実施義務を課している。また、それを受けて9条1項・2項は、県・市町村は「ホームレスに関する問題の実情に応じた施策を実施するため必要があると認められるときは」実施計画を策定する義務があるとする。しかし、域内に、自立支援施策を必要とするホームレスが1人でも存在し、ないしその可能性があるという「実情」がある限りは、その者に対する6条の施策実施の義務を実効あらしめるために、地方公共団体は、実施計画を策定する義務を免れるものではないと解するべきである。
これを貴市の場合に見ると、貴市域内には少なくとも約100人以上のホームレスが存在し、また神奈川県内には全国の都道府県でおよそ第3位の多数のホームレスが域内に存在するという「実情」がある。そのことのみをもっても、貴市は、実施計画を策定し施策を実施する義務を免れる余地はないと考えられる。
9.我々との連絡
(1) 「地方公共団体は、・・・民間団体が果たしている役割の重要性に留意し、これらの団体との緊密な連携の確保に努める」(同法12条)とする趣旨に鑑みて、施設管理者が同法11条の措置を行う場合には、予め当該民間団体である我々の意見を聴き、緊密に連絡をとることを原則とするべきである。
(2) 同法12条の趣旨に鑑みて、貴市が実施計画を策定し、および施策を実施するにあたっては、当該民間団体である我々の意見を尊重するべきである。
以 上
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